2026.06.18長崎イチゴゆめのか:ジオバンクミーンズ/メソッドで栽培
長崎イチゴ「ゆめのか」
ジオバンク-(土・野・菌・酵)-栽培暦
本栽培暦は、長崎県型高設栽培・暗黒低温処理作型を基本に、エポックジャパンが提案するジオバンク ミーンズ/メソッドを組み合わせた生産者向けモデルです。
「ゆめのか」は多収で果実が硬く、輸送性に優れる一方、展葉が遅くなりやすく、頂花房から第1次腋花房の間に収穫の中休みが生じやすい品種です。
したがって、単に肥料を増やすのではなく、
土壌・培地環境を整える
→白根・細根を維持する
→水と養分を安定して吸収させる
→葉でつくった糖を花・果実・根へ転流させる
という流れで管理します。
1.ジオバンク「土・野・菌・酵」の役割
| 区分 | 使用資材 | 主な役割 | イチゴ栽培での目的 |
|---|---|---|---|
| 土(つち) | ペサージ | 有機物の発酵・堆肥化を支える | 腐植、団粒構造、保肥・保水・排水性の改善 |
| 野(の) | サンパック | 収穫残渣や未分解有機物を処理する土壌リセット | 次作へ病害・残根・残肥を持ち越しにくい環境づくり |
| 菌(きん) | ズットデルネ | 有用微生物とアミノ酸等を根圏へ供給 | 活着、白根・細根の維持、肥料吸収の安定化 |
| 酵(こう) | リズム3 | アミノ酸・酵素資材による代謝補助 | 光合成、転流、果実肥大、糖度・色艶・日持ちを支える |
ジオバンク資材は、施肥・潅水・温度管理・防除に代わるものではありません。
土壌診断、生育診断、県・JAの基準を土台に組み合わせます。
2.年間栽培暦
5~6月|親株・採苗・子苗づくり
生育目標
- 炭疽病などを持ち込まない健全苗を確保する
- 太根だけでなく白い細根を多くつくる
- 葉色を濃くしすぎず、クラウンが締まった苗に仕上げる
基本管理
- 親株と子苗を分け、雨よけ育苗を基本とする
- ランナーを順次誘引し、必要数を計画的に受苗する
- 過湿・高EC・窒素過多を避ける
- 古葉、病葉、不要なランナーを除去する
- ハダニ、炭疽病、うどんこ病を定期観察する
長崎県の試験では、10.5cmポットによる雨よけ高設育苗、6月上~下旬の子苗切り離しが用いられています。
ジオバンク管理
- ズットデルネ:300~1,000倍を目安に、7日程度の間隔で潅水または葉面散布
- リズム3:500~1,000倍の葉面散布を基本に、苗の硬化状態を見ながら使用
- 強日射・高温・根傷み時は、濃度を上げるより薄めの少量多回を優先する
確認ポイント
- 新根が白いか
- 根鉢が過湿で褐変していないか
- 葉柄だけが長く、葉色が濃くなっていないか
- 朝に葉先の水滴が確認できるか
- クラウン内部に褐変がないか
7月|苗の充実期
生育目標
花芽分化処理に入れる、根量とクラウン径の揃った苗をつくります。
基本管理
- 午前中を中心に潅水し、夕方まで過湿を残さない
- 強日射時は遮光するが、長期間の過剰遮光は避ける
- 窒素を効かせすぎず、葉数・葉色・クラウン径を揃える
- 苗床内の風通しを確保する
- 弱苗、病害苗、芯止まり苗を早めに除外する
ジオバンク管理
- ズットデルネで根圏を安定させ、植え傷みしにくい苗を目指す
- リズム3は葉面散布を中心とし、高温期には早朝または夕方に処理する
- 葉色が濃すぎる苗では、窒素液肥の追加よりEC・潅水・根傷みを確認する
8月|花芽分化準備・低温処理
「ゆめのか」は頂花房の花芽分化が遅れる傾向があるため、年内収量を確保する場合は夜冷短日処理または暗黒低温処理を利用します。
長崎県の暗黒低温処理例では、8月25日前後から9月9~10日まで、15℃設定で処理しています。
基本管理
- 処理前に苗の根鉢、葉数、クラウン径を揃える
- 処理中の鉢土乾燥と蒸れを防ぐ
- 処理終了日を暦だけで決めず、花芽分化を確認する
- 定植床を早めに準備する
- 未分化苗の早植えを避ける
中休み対策の選択肢
作型を分散できる場合は、長期夜冷苗を一部組み合わせる方法があります。
長崎県の試験では、第1次腋花房まで分化させた長期夜冷苗は花房間葉数が約2枚となり、1~2月の収量増加と中休み軽減につながりました。
7~8月|本圃・培地の準備
土「ペサージ」
前年から完熟発酵堆肥を準備し、地床栽培では土壌診断に基づいて投入します。
堆肥づくりの基本例:
- 米ぬか100kgにペサージを均一散布する
- 原料と十分に混和する
- 発酵温度を確認する
- 未熟臭や異常発熱がなくなるまで熟成させる
- 完成堆肥の一部を次回の種菌として利用する
未熟有機物を定植直前に大量投入しないことが重要です。
野「サンパック」
地床栽培または土壌利用型施設では、前作残渣処理と圃場リセットに使用します。
10a当たりのモデル例:
- 前作残渣を細断して鋤き込む、または圃場外へ搬出
- 米ぬか100kg、または油粕60kg
- サンパック2kg
- 土壌と均一に混和
- 十分に潅水
- 透明フィルムで被覆して約20日間密閉
- 処理後は十分にガス抜きし、定植前に根傷みの危険がないことを確認
高設栽培では、培地量や設備構造が異なるため、この土壌処理モデルをそのまま適用せず、洗浄・残根除去・培地EC確認を中心に組み直します。
9月上~中旬|花芽確認・定植
暗黒低温処理作型の目安は、9月10日前後の定植です。長崎県の試験では、適期から7日遅れると収穫開始が7~10日遅れ、特に地床栽培で年内収量への影響が大きくなりました。
定植時の基本
- 花芽分化を確認してから定植する
- クラウンを埋めない
- 根鉢を崩しすぎない
- 苗の向きを揃える
- 定植直後は活着を優先し、乾燥させない
- 活着後は過湿を避け、根を深く広げる
ジオバンク管理
- 定植前:苗をズットデルネ1,000倍液へ吸水
- 必要に応じてリズム3も別工程で1,000倍吸水
- 定植直後:ズットデルネを株元潅水
- 活着まで:3~7日間隔を目安に、根と葉の状態を見ながら補助
- 原液同士は直接混ぜない
- ズットデルネは殺菌剤との同時混用を避け、散布間隔を確保する
9月下旬~10月|活着・第1次腋花房分化期
この時期は、年明けの中休みを左右する重要期間です。
生育目標
- 新葉が一定の間隔で展開する
- 白根が培地・土壌内へ広がる
- 窒素過多による徒長を避ける
- 第1次腋花房の分化を安定させる
基本管理
- 高温日は換気・遮光・早朝潅水を組み合わせる
- 活着後は夜間まで培地を過湿にしない
- 土壌・培地ECを確認し、強い追肥を避ける
- 芽数を整理し、不要なランナーを除去する
- マルチ前に根・葉色・花芽の状態を確認する
長崎県の研究では、暗黒低温処理作型で9月下旬から10月中旬に50%遮光黒寒冷紗を使用すると、第1次腋花房が前進し、2月までの収量が増加しました。
ただし葉が伸びやすく、マルチ作業性が低下するため、生育を見て利用します。
ジオバンク管理
- ズットデルネ:300~1,000倍を7日程度の間隔で潅水
- リズム3:500~1,000倍で葉面散布
- 根が健全なのに葉色が淡い場合:施肥濃度と潅水量を確認
- 根が褐変している場合:肥料追加より、過湿・高EC・地温を先に改善
10月中~下旬|マルチ・保温開始
長崎県の試験例では、マルチ被覆は10月中旬、ハウス被覆は10月中~下旬に実施されています。
管理ポイント
- 出蕾前後の急激な肥効上昇を避ける
- ハウス密閉後は湿度が上がるため、朝の換気を徹底する
- 花房を外側へ誘引し、受光と作業性を確保する
- ミツバチ導入前に農薬・資材の影響を確認する
- 灰色かび病、うどんこ病、ハダニを早期発見する
11月|開花・着果・収穫開始
暗黒低温処理作型では、11月中下旬から収穫が始まるモデルとなります。
生育目標
- 頂花房を確実に受精・肥大させる
- 第1次腋花房を遅らせない
- 葉柄や果梗枝を徒長させない
- 根への糖供給を切らさない
摘果
頂花房は株勢・苗質・出蕾時期によって調整します。
「ゆめのか」は着果数を増やすと早期収量は増える一方、平均果重が小さくなる傾向があります。
大玉主体では着果負担を抑え、株勢が十分な場合に着果数を確保します。
電照
暗黒低温処理栽培では11月5日前後が一つの目安です。開始が早すぎると葉や果梗枝が著しく伸び、作業性が悪くなるため、暦だけでなく葉柄長・葉色・展葉速度で調整します。
ジオバンク管理
- ズットデルネ:根の更新を目的に、7~14日間隔を基本として潅水
- リズム3:開花・着果・肥大期に500~1,000倍で葉面散布
- 曇雨天続きでは濃度を上げず、潅水量と窒素供給を抑える
- 着果負担が強い株は、摘果と根圏管理を優先する
12月|頂花房収穫最盛期
管理の中心
- 日射量に合わせて潅水する
- 夜間の過湿と結露を減らす
- 古葉・病葉を一度に取りすぎない
- 果実への受光を確保する
- 第1次腋花房の出蕾・花房間葉数を確認する
長崎県型高設栽培の試験値では、日射比例潅水の基準として、日射1MJ/㎡当たり37.3ml以上/株が示されています。
平年日射からの試算は、11月351ml、12月276ml、1月280ml、2月388ml、3月511ml、4月630ml/株・日です。
ただし培地量、排液率、天候、株勢に合わせた補正が必要です。
1~2月|中休み対策・根の老化防止
中休みの主な流れ
頂花房の着果負担増加
→葉でつくられた糖が果実へ集中
→根への糖供給が減少
→白根・細根の発生低下
→水分・養分吸収の低下
→展葉と第1次腋花房の生育が遅れる
確認する順番
- 白根が残っているか
- 培地が低温・過湿になっていないか
- ECが上昇していないか
- 新葉が小さくなっていないか
- 頂花房の着果負担が強すぎないか
- 電照・温度管理が草勢と合っているか
ジオバンク管理
- ズットデルネ:白根更新を狙って潅水
- リズム3:晴天前後に葉面散布し、葉の代謝と果実への転流を補助
- 根が弱いときは、肥料濃度を上げる前に酸素不足・過湿・低温を改善
- 曇天時は窒素と潅水を抑え、晴天回復時に急激な肥効を出さない
- 老化葉は整理するが、一度に多く除去しない
3~4月|増収・成り疲れ防止期
日射・気温・着果数が増え、株の水分要求量が急上昇します。
基本管理
- 潅水回数を増やし、1回量だけを過度に増やさない
- 晴天日の昼萎れを防ぐ
- 排液または土壌水分を確認する
- ハウス内高温と果実温度の上昇を抑える
- アザミウマ、ハダニ、うどんこ病、灰色かび病を早期防除する
- 小果・乱形果を早めに摘果する
- 果房と葉の重なりを整理し、受光を確保する
潅水不足は3月以降の萎凋と商品果収量低下につながります。
長崎県試験では、3月以降は日量511ml/株以上が平年日射に基づく一つの試算値です。
ジオバンク管理
- ズットデルネ:高温前に根圏を整え、白根の更新を継続
- リズム3:果実肥大、色艶、食味、日持ちを意識して葉面散布
- 散布は高温時を避け、葉が乾く時間帯に行う
- 果実品質が落ちた場合、資材追加だけでなく、着果負担・潅水・EC・受光を同時に点検する
5~6月|後期収穫・収穫終了
生育目標
- 小玉化と軟果を抑える
- 根を最後まで維持する
- 病害虫を次作へ持ち越さない
- 収穫終了後、速やかに残渣処理へ移る
基本管理
- 高温時の換気と遮光を強化する
- 朝夕の果実温度が低い時間帯に収穫する
- 過熟果・病果を施設内に残さない
- 出荷計画に合わせて着果数を整理する
- 収穫終了直前まで急激な水切りをしない
収穫終了後
- 病害株を区分する
- 地上部・根・マルチ・点滴資材を整理する
- 残肥、EC、pHを測定する
- 地床ではサンパックによる残渣分解・土壌リセットを検討する
- 高設では培地洗浄、残根除去、給排液設備の点検を行う
- 次作のペサージ発酵堆肥づくりを始める
3.生育診断による使い分け
| 症状 | 最初に疑うこと | 基本対策 | ジオバンクの位置づけ |
|---|---|---|---|
| 葉色が濃く葉柄が長い | 窒素過多、過湿、電照過多 | 施肥・潅水・電照を調整 | 根圏を安定させ、追加窒素を急がない |
| 新葉が小さい | 根傷み、低温、高EC、着果過多 | EC・地温・根・摘果を確認 | ズットデルネで根の更新を補助 |
| 果実が肥大しない | 日射不足、着果過多、吸水不足 | 摘果、受光、潅水を調整 | リズム3を代謝・転流管理に組み込む |
| 糖度が上がらない | 過剰潅水、窒素過多、受光不足 | 潅水時刻、葉整理、ECを確認 | リズム3だけに頼らず環境を同時改善 |
| 1~2月に収穫が落ちる | 第1次腋花房分化遅延 | 育苗・低温処理・定植・電照を見直す | 秋の根づくりを重点化 |
| 春に急に萎れる | 潅水不足、根量不足、塩類集積 | 日射比例潅水、排液・EC確認 | 高温期前から白根を維持 |
実践上の重要ポイント
「ゆめのか」で最も大切なのは、収穫中休みが発生してから対処するのではなく、育苗から10月までに白根・葉面積・第1次腋花房を準備することです。
ジオバンク ミーンズ/メソッドでは、
- 収穫終了後に「野」で圃場をリセット
- 次作前に「土」で腐植と土壌物理性を整備
- 育苗から収穫後期まで「菌」で白根を維持
- 開花・肥大・高負担期に「酵」で代謝と転流を支える
という年間循環を基本とします。
資材の希釈倍率・使用量・混用可否は、商品表示とエポックジャパンの最新指導を優先してください。
特に殺菌剤と微生物資材の近接使用、ミツバチ導入中の散布、葉面散布後の高温・結露には注意が必要です。施肥量は土壌・培地分析、原水EC、排液EC、葉色、着果負担に応じて調整してください。
